公開日:2016年5月25日 更新日:2017年8月3日 ©

LTEモバイル通信、WIDESTAR通信を組み合わせた定期情報発信システム構築(Googleマップ連動本船動静情報)


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【船舶・海洋システム事業/ネットワークソリューション導入事例】(2015.10)

導入の背景

今回の導入は導入事例「船舶における高速LTEモバイル通信及び外部アンテナの設置」の続きです。本船ではLTEモバイル通信を利用して、収録している船舶情報データ(※動静及び観測機器、機関情報)を定期的に陸上の処理サーバへメール送信し、Googleマップによる航路情報描画および船舶取得情報の表示を行い、本船動静情報として情報発信を行っております。

今回の依頼は、普段は衛星電話として利用しているWIDESTARIIを利用して、LTEモバイル通信利用エリア圏外を航海している場合でもWIDESTARIIのデータ通信を利用して、船舶情報データの発信をしてほしいという依頼です。WIDESTARIIを利用できれば通信エリアは日本沿岸から200海里まで対応できますので、LTEモバイル通信では今まで実現できなかった日本海域のエリアがほぼほぼ網羅できるようになり、活用の幅が広がります。

要はLTEモバイル通信が圏外ならばWIDESTARIIに自動で切り替えて定期発信を行い、LTEモバイル通信がエリア内になればLTEモバイル通信の利用に戻るという要件になるのですが、一見すると簡単そうで、よく考えると難しいそんな課題に私たちは挑むことになりました。

望星丸航海情報イメージ

本船動静情報を利用した望星丸航海情報イメージ

課題、その取り組み

現在のシステム構成として、船舶情報データをまとめているデータベースサーバがあり、このサーバは外部とのインターネット接続はできないようにLANセグメントを分けています。そして、船舶情報送信用のパソコンが一台あり、このパソコンは標準LANポートと拡張LANポートの2ポートを持っており、標準LANはデータベースサーバに接続できる船内LANに接続しており、拡張LANはLTEモバイル通信のLANセグメントに接続しており、定期的にデータベースサーバに接続し、収録された船舶情報データを陸上の処理サーバに送信しています。

課題として、どのようにWIDESTARIIとの自動切替をして船舶取得情報を送信するのかということになるのですが、現在の船舶情報送信用パソコンにさらにLANポートを追加してWIDESTARIIをつなぐにも、LTEモバイル通信圏外を検知してWIDESTARIIで発信させる、LTEモバイル通信が利用エリア内に戻ったらLTEモバイル通信に戻るという仕組みは考えてみましたが、実現は無理という結論に達し、私たちは問題解決策を考え出しました。

問題解決策としては、第一にもう一台別の船舶情報送信用のパソコンを追加します。追加したパソコンにはLANポートが標準LANポートと拡張LANポートの2ポートあり、標準LANポートはデータベースサーバに接続できる船内LANに接続し、拡張LANポートはWIDESTARIIのFAXモデムに接続します。

第二にデータベースに陸上サーバへの送信作業が終わっているかどうかを示すフィールドを追加します。

第三に自動メール送信ソフトをそれぞれのパソコンに合わせて改修し、メールサーバから正しく送信できたことを示す情報を受け取って、第二に追加したフィールドに送信ステータスをいれることとしました。また、機能改良として、送信するデータをZip/Lzh圧縮処理を行い、ファイルサイズを小さくしてからデータ送信するように改修しました。

システムの肝としては、それぞれのソフトで定期送信時間をずらし、先の時間にLTEモバイル通信接続船舶情報送信パソコンが送信処理を試みて、うまく送信ができればデータベースに送信ステータスをいれる。WIDESTARII接続船舶情報送信パソコンではデータベースの送信ステータスを見て、送信されていればなにもしない。送信されていなければ、WIDESTARIIを発信させて、データをメール送信してデータベースに送信ステータスにいれるというポイントです。これであれば、エリア圏外だったLTEモバイル通信が利用エリア内に入ればデータベースに送信ステータスが入るので、WIDESTARII接続船舶情報送信パソコンはデータベースを見て送信しなくなります。

WIDESTARII発信制御の壁

問題解決策にて、お客様の要望を満たすことはできましたが、壁が発生しました。それはWIDESTARIIの発信制御です。本船ではWIDESTARIIは電話用途以外にFAXとしても使用しており、本船のWIDESTARIIにはFAXモデムが設置されています。元々WIDESTARII自体は常時インターネット接続ではなく、使用する際にはモデムによる発信作業をしてインターネット回線に接続して、不要になれば接続を切断する必要があります。また、接続のままにしておくと、パソコンから意図しないパケットがながれるため、通信料金が無駄にかかってしまいます。壁としてはこのWIDESTARIIの発信制御をいかにして、上手にコントロールするかです。

WIDESTARII衛星通信端末

WIDESTARII衛星通信端末

WIDESTARIIFAXモデム

WIDESTARIIFAXモデム

本船の場合WIDESTARIIとパソコンをインターネットに接続しようとした場合に2通りの方法があります。一つはパソコンとWIDESTARII衛星端末を直接接続し(※FAXモデムは介さない)、Windows側でダイヤルアップ接続を行い、接続する方法。もう一つはFAXモデムを介して、FAXモデム内のWEB-GUIからダイヤルアップを行い、接続する方法があります。

前者のWIDESTARII衛星端末と直接接続する方法では、Windowsでダイヤルアップにより発信制御をしているので、容易に制御が可能となりますが、欠点があり、FAXモデムにつないでいないため、つなぎ直すまで、FAXができなくなります。よって前者は断念します。

後者のFAXモデムを介して接続する方法では、FAXモデム内のWEB-GUIからダイヤルアップを行い接続するのですが、WEB-GUIを制御することは不可能であり、その代わりにFAXモデムには自動発信機能があり、パケットを受け取ると自動で発信する機能を有しています。そして、一定時間パケットが流れなければ自動切断する機能があります。結果として私たちはこの機能を利用して、制御することにしました。

ただ、この自動発信、自動切断機能はくせ者で昨今のパソコンは色々なソフトからパケットが流れるため、なかなか自動切断してくれなかったり、勝手にパケットが送られて自動発信してしまうことがあり、この壁に悩まされました。解決策として考えたのは、WIDESTARIIと接続する拡張LANポートのIPアドレスを制御して強制的にパケットを流さないようにして、制御させる方法を考えつきました。このシステムではWIDESTARIIでデータ送信する必要があった際に、WIDESTARIIと接続するLANポートを固定IPからDHCPに切り替えます。そしてWIDESTARIIからIPアドレスを受け取り、船舶情報のデータ送信が完了すると強制的にLANポートのIPアドレスをDHCPから固定IPに変えてLANセグメントを分けます。これにより、WIDESTARIIの自動切断機能が確実に働くようになり、問題解決することができました。

システム概要(全体図)

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導入の効果

LTEモバイル通信エリア外でもWIDESTARIIを利用したデータ送信ができるため、本船動静情報の対応可能エリアが広がり、より活用できるものとなりました。また、自動送信ソフトでは送信データをZip/Lzh圧縮処理を行い、ファイルサイズを小さくしてから送付するため、WIDESTARIIの通信費は必要最低限に抑えることができています。

担当者よりコメント

今回のシステムはWIDESTARIIですが、インマルサットなどでも同様のソリューションが提案できます。同様の案件がございましたら、ぜひ弊社にご提案させてください。

また、動静情報では今回の事例では本船単船のみの運用ですが、複数の本船動静情報をGoogleマップ上に展開することが可能で、表示される情報もお客様が配信したい情報にすることが可能です。ぜひ、関連ページもご覧くださいませ。

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